4年ほどまえにふと「バーのオーナーになりたい」と思い立った。
理由はすごくシンプルで、自分自身がお酒を飲みながら人と話すのが好きだったこと。そして、バーのオーナーって、純粋にかっこいいと思ったからだ。
俺はその思いを、色んな人に「俺、将来バーのオーナーになりたいんだよね」って、言い散らかしていた。 ただ、この段階では誰もが「へえ、そうなんだ」と聞き流すだけだった。自分自身でも、「いつか将来、お金に余裕ができたらやりたいな〜」くらいの軽い気持ちだった。
それから1年ほどは、特に大きな行動を起こすこともなく、ただ時間が過ぎていった。

経営者になる前に、まずは「現場」を知るべきだと思った
しかしある日、ふと立ち止まって考えた。
「自分はバーのオーナーになりたいけれど、実際にカウンターに立つバーテンダーには、どんな課題や苦労があるんだろう?」
経営者を目指すにしても、現場のプレイヤーの苦労が分からなければ、お店なんてうまくいくわけがない。そう思った俺は、プレイヤーの視点やリアルな現場の課題を肌で理解するために、思い切って週末限定でバーでアルバイトを始めることにした。当時会社では副業が許可されてなかったが、仲のいい役員に話して見逃してくれた。
実際に働き始めてみると、それまで客の立場では全く見えなかった現実が、次々と目の前に突きつけられた。
お酒造りの基本的なスキルやお酒の勉強、居心地の良い空間づくりの裏側、そしてお客さんとの絶妙な距離感や「聞いちゃいけないこと」のタブーまで……。やっぱり、現場のカウンターに身を置かなければ分からないことばかりだった。

それに加えて、現場に入ってから強く実感したのが「バーテンダー(アルバイト)の入れ替えが想像以上に激しい」という現実だった。人が辞めては入り、入っては辞めていく中で、どうやって店のクオリティや雰囲気を一定に保つのか。プレイヤーとしてだけでなく、将来店を経営していく上での大きな課題にも、この時初めて気づかされることになった。
「ただの夢」が「本気の挑戦」に変わった瞬間
そうして週末バーテンダーとしての生活を続ける中で、以前「バーのオーナーをやりたい」と言い散らかしていた知人たちに、「最近、週末だけバーでアルバイトしてるんだよね」と近況を伝えた。
その時、みんなの反応が明らかに違った。
「え、あの時言ってたのって本当だったんだ!?」と、めちゃくちゃ驚かれた。
みんなが、俺のことを「ただ口だけじゃなくて、本気で挑戦しようとしている人間」として見初めてくれた瞬間だった。
この「実際にアルバイトを始めた」という事実が伝わってから、それまでただの夢物語だと思っていた人たちが、次々とバー関連の仕事をしている人や、業界の関係者を紹介してくれるようになった。

口で言うだけなら、ただの夢物語で終わる。
だけど、そこに小さな一歩でも「実際の行動」が伴ったとき、周囲の見る目がガラッと変わり、本気で応援してくれたり、次へ進むための手助けをしてくれたりする——これが、俺が最初に行動して一番痛感したことだ。
(中編へ続く)



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